事業価値/企業価値の算定方法

事業価値計算の分類

事業価値(場合によっては企業価値)の計算は、大きく以下の3つに分類されます。

 

  1. 当該事業からもたらされる将来キャッシュフローや配当などを評価の基準とするインカムアプローチ

    DCF(Discounted Cash Flow)法、収益還元法など

  2. 同様の事業を行う他社の事例から、その他社の利益や売上と市場価値の関係を基準とするマーケットアプローチ

    PERマルチプル法、PSRマルチプル法など

  3. 予測貸借対象表の純資産価額を基準とするコストアプローチ

    簿価純資産法など

 

いずれの方法をとっても、将来予測であるため、ある方法が他の方法より確実さが高い、ということはありません。しかし、インカムアプローチは、その算定時に、詳細な財務諸表を必要としますので、実現可能性を検証する場合に、詳細な分析が可能となるという利点が挙げられます。その一方で、財務諸表の予測があまく利益が大きくなってしまう場合(特に、ベンチャー企業の作成する予測財務諸表はこの傾向が高いのですが)、企業価値も大きくなってしまうという欠点もあります。

 

売上にもコストにも不確実性が高い場合は、その中では最も検証しやすい売上にのみ着目し、同業他社を参考に、次の12か月の売上から事業価値を算定するPSRマルチプル法などが使われます。
では、そのマルチプル(=市場価値/直近12か月の売上で算定される乗数)としてどのような数値がよいのか、という問題に関しては、様々な企業(証券会社や調査機関など)が算定しておりますので、ネットで検索されるとよいでしょう。

 

事業価値評価のステップ

実際の事業価値評価においては、簡便的にマルチプル法を使う場合も多いと思われますが、いずれも予測財務諸表を作成する必要があります。ただ、DCF法では損益計算書だけでなく、投資や貸借対照表なども作成する必要がありますし、その後も現在価値に割り引くなど、多少の手間が必要となります。

 

本ホームページでは、このDCF法による事業価値評価のステップを以下に記載します。

 

①予測財務諸表(損益計算書、主な貸借対照表項目の予測)を作成します

将来の財務諸表を予測するには、まずは、自社のコストモデル、つまり、ある売上を実現するにはどのようながコストがかるのか、売上が増加する場合にはかかるコストはどのように変化するのか、を明確にしておく必要があります。
このステップの詳細は、コストモデルと予測財務諸表の作成に記しておりますので、こちらを参照ください。
なお、コストモデルと予測財務諸表の作成では、将来12か月の予測でしたが、事業価値の評価では、3年から5年程度を予測する場合が多いように思われます。
そこで、コストモデルと予測財務諸表の作成で用いていた財務シミュレーション用のファイルを将来5年間にわたって拡大したものをこのファイルに準備しました。以後、本ページは、このファイルを用いて説明します。

 

②将来キャッシュフローを予測します

①で作成した損益計算書の予測から、キャッシュフローを予測します。その際、キャッシュフローに影響を及ぼす貸借対照表項目に関して、合理的な仮定をおくことになりますが、実はこの仮定がキャッシュフロー予測の重要なファクタとなります。
例えば、売上を倍に増加させようとした場合、販売員や或いはネット販売対応要員を増加させるだけでなく、在庫もそれなりに確保しておく必要があります。また、その在庫をあらかじめ仕入れる際に買掛で仕入れることができればよいのですが、それが難しければ、売上が上がる前に多額の現金が必要となります。
このような実際のビジネスの現場を想定できなければ、まともなキャッシュフロー予測は困難です。①で予測した売上計画を実現する裏側で何が必要か、また、それがどのような勘定科目を通じて、キャッシュフローに影響を及ぼすのかを、想定します。

 

とはいえ、実際には、最低限、以下の項目を想定することから始めてみてください。これだけで十分な場合も多いと思われます。

 

  • 売上の増加に呼応した売掛金の増加

    もし、平均的な売上回収期間がひと月であるとすれば、年度末に残っている売掛金は当該年度最終月の売上となります。或いは、その年度の売上の1/12でもいいかもしれません。
    いずれにせよ、年々売上が増えれば、売掛金も増加します。

     

    (売掛金の増加は、キャッシュフローにマイナスの影響って、おかしくない?)
    経理の話となりますが、売掛金が増加することは、キャッシュフローの計算では現金を”減らす”ことになりる、という話を耳にされるのではないでしょうか?
    「売上が増加したのに現金が減る!?」ということに違和感を覚える方も多いのですが、これはキャッシュフローの計算が、売上からコストを差し引いた利益から始まっていることによる錯覚、言葉の綾です。
    キャッシュフローの計算では、まずスタートとして、売上が増加した分は既に利益が増加している=キャッシュが増加している、ということから始まります。このため、もし、売上が増加しても、売掛金が増加していないとすれば、キャッシュは利益が増加した分だけ増加します。
    ところが、売上が増えても、増えた分の一部が未回収であったとすれば(=売掛金が増加したとすれば)、その未回収部分だけ、「利益の分だけ増えたと思っていたキャッシュ」から差し引く必要があるということになります。
    それで、売掛金の増加はキャッシュフローのマイナス、という言い方をします。売上が増えるとキャッシュが減るわけではないのです。

  • 売上の増加に呼応した在庫の増加

    例えば、販売する製品の製造期間が2か月かかるとすれば、最低でもその程度の在庫がないと売上が実現できません。特に売上が増加する場合は、さらに余裕を持って在庫を準備しておく必要があります。

  • 在庫の増加に呼応した買掛金の増加

    在庫が増加するとなれば、その在庫を拡充するための買掛金の増加を想定する必要があります。
    製造業の場合は、仕掛品などの増加も想定する必要があります。

  • 固定資産の増加

    売上を増加するために設備を拡充する必要がある場合は固定資産投資が必要となります。
    また、ソフトウェアなどの投資の場合は開発に用いた人件費を固定資産に振り替えるなどの処理を考慮する必要があります。
    固定資産の増加は、その後の減価償却費としてPLに影響を及ぼしますので、そちらも留意が必要です。

  • 未払金の増加

    販管費のうち、月をまたがって支払うものがある場合は未払金となります。販管費が大きく増加する場合などを考慮する必要があります。

  • 法人税、消費税の増加

    キャッシュフローに大きなインパクトを及ぼす割に忘れられがちなのは、法人税や消費税となります。売上やコストが大きく変わらない状況であれば、毎年の金額が変わらないので忘れていてもキャッシュフローに大きな影響はないのですが、大きく変動する状況では支払額も大きく変化しますので、留意が必要です

 

次に、上記の要素がキャッシュフローに及ぼす状況を加味して、各年のキャッシュフローを作成します。
先ほどのファイルのXXワークシートにこの一連の流れを示しておりますので、ご参照ください。

 

③各年のキャッシュフローを割り引きます

 

 

 

 

 

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