業務プロセスのAsIsの可視化

業務プロセスのAsIsの可視化

業務を改善するためには、まず、現行の業務プロセスを可視化することから始めます。
可視化の手法も可視化のためのツールも様々に存在しますが、ここでは、私が作業する際の留意点とステップを紹介します。

 

可視化する業務の「範囲」と「粒度」を決定する

このファイルに、比較的事業構造の簡単な企業の業務プロセスの一部の例を記します。
業務、及び業務プロセスは、以下のように定義しておくとよいと思われます。

 

  • 業務

    一つ以上のなんらかの目的を達成する活動。

  • 業務プロセス

    複数の業務のつながり・連鎖。シーケンス。

 

業務は活動ですので、各業務の命名は、「請求書を 作成する」のように、目的語(請求書を)と活動を表わす動詞(作成する)から構成したほうが分かりやすいと考えます。

 

但し、出荷業務全体や販売業務全体を表現したいような場合は、その中に様々な活動が含まれているため、目的語や動詞を一つに絞ることが難しいと思われます。

 

このように業務は、その対象とする活動の抽象度によってレベルが分かれます。このレベルを、業務の”粒度”と表現することがあります。なお抽象度の高い業務の表記は、さきほどのファイルで示したように、活動を表わす動詞を除いた形式で表現するほうがよいでしょう。

 

業務プロセスは、複数の業務の連鎖ですので、どのレベル(粒度)でも表記することができます。
どのレベルで業務プロセスを表記するべきかは、業務プロセスの可視化を実施しようとする範囲や目的によって選択すればよいと思われます。
但し、複数の人間で可視化の作業を進める場合は、可視化の粒度や業務の命名規則を事前に取り決めたほうがよいと思われます。

 

業務プロセス可視化のためのツール

業務プロセスの可視化を実際に行う場合には、可視化の目的に応じて、まずは、

  • 可視化しようとする「範囲」全体を把握する
  • 可視化するプロセスの粒度を把握する

必要があります。これらを取り決めた後に

  • 業務のつながりを明確にする

ことになります。なお、実際に作業をしてみると、これらの一連の作業は一方通行ではなく、行きつ戻りつしながら進んでいきます。

 

業務プロセスを可視化するには多様な手法がありますが、本ホームページでは以下の手法、ツールを紹介します。

 

【可視化する範囲や粒度を取り決めるために】

  • DMM(Diamond Mandara Matrix)

    一つの業務を構成する機能を多段階層的に表現できるため、様々な範囲や粒度を検討しながら取り決める際に便利。
    これは経済産業省が、各省庁のIT投資管理をよる効率的に実施するために、平成15年にとりまとめた「業務・システム最適化計画(Enterprise Architecture :「EA」)」の策定ガイドラインで紹介された手法です。
    少し旧いものですが、現在でも十分に適用できます。

     

その他では、UML(Universal Modeling Language)のユースケース図なども有用と思います。

 

【業務のつながりを明確にするために】

  • 業務フロー図

    こちらは、上記の「業務・システム最適化計画」で紹介された業務流れ図(WFA)、UMLのアクティビティ図など多様な手法、ツールがあります。
    本ホームページは、この業務フロー図からデータベースやアプリケーションなどの設計をするなどの制約がないため、多様なツールのうち、各自が使用してみて使い勝手のよいものを使用すれば十分です。

本ホームページでは、導入にコストがかからない以下のツールを使用して、今後の議論を進めます。

  • Activity Diagram Drawing Tool

    株式会社オージス総研殿のホームページから無償ダウンロードできる業務フロー作成ツール

 

具体的な可視化の事例

 

具体的な可視化の事例として、以下のような企業を想定します。

 

計測機器メーカー

  • 売上50億円、従業員150名程度。
  • 主に半導体製造装置に用いられる計測器の製造販売保守を行う。
  • 売上の30%、営業利益の80%は、それ以前に販売した製品の保守サービスによる売上及び利益であるが、社内での保守部門の位置づけは低く、保守で得たキャッシュもその多くは製造の研究開発に投入されている。
  • 近年、保守の売上及び利益率が低下傾向にある。新規販売台数は落ちておらず、財務分析からも特に目立ったコスト増加も認められない。

    ⇒ 分析に関しては「収集・統合した情報を理解する」参照

 

そこで、このメーカーの保守部門の売上高及び営業利益を改善させることを目的として、早速作業を開始してみます。

 

DMM及び業務フロー図の作成

こちらが作成したAsIsのDMMAsIsの業務フロー図となります。
こちらの作成ステップや各ステップでの留意点を以下に記します。

 

  1. 当該企業の保守業務に関して、契約から保守作業の実施、請求、入金といったメインプロセスに関する一連の流れを、DMMにできる限り幅広く記載します。

    【留意点】
    今回は売上高や営業利益を増加させることを目的としていますので、設備を交換したり消耗品を補充したりといった作業のみならず、契約から入金までといった範囲を幅広く記載する一方、保守作業そのものに関しては、極めて粗く記載しています。
    当初のスコープに入っていない範囲を後から追加することはスケジュール的にも精神的にもつらいものです。このため、後で削るつもりで対象範囲を大きくとる一方で、粒度を細かくしすぎることなく、早く全範囲を見渡せるようになることが重要です。

  2. DMMに記載した個々の業務の連係を、業務フロー図として記載します。

    業務フロー図の記載方法は、IDEF0、IDEF1X他、多様なものがありますが、上記のAsIsの業務フローでは以下のルールを基本として作成しています。

     

    (業務フロー図記載の基本ルールの一例)

     

     

    また、業務フローを作成する際に、各業務において発生している課題を記していきますが、もし、一つの業務で、多数の課題が発生している場合は、DMMに戻り、その業務の粒度を一段深めます。
    【留意点】
    ここで抽出する課題は、可能な限り様々な部門、ポジションから広く収集します。また、課題を収集した方には、後のToBeを作成した場合にも、必ず説明する必要があります。
    業務フローの改善は一度で終わることがないため、現場や経営層とのコミュニケーション、特に、「話せば何か対策をしてくれるかもしれない」という双方からの期待、信頼を醸成し保つことは非常に重要です。

  3. 改善する業務の対象範囲にヌケ・モレがないことを確認します。

    次に、これまでに作成したAsIsの業務フロー図の各業務のインプット文書、情報とアウトプット文書情報に着目してみます。
    業務フロー図の各業務は1.2.3という風に第三レベルで記載されていますが、1.2といった第二レベルでまとめてみますと、そのインプット、アウトプットは以下のようになっています。

 

(第二レベルのインプット・アウトプット)

 

番号

第二レベル業務名称

インプット

アウトプット

備考

1.1 契約更新の見積を作成する 保守契約書 押印済み見積書 押印前の「見積書」は、この第二レベルの業務内で作成されている
1.2 契約更新を行う 押印済み見積書

注文請書
押印済み保守契約書

押印前の「保守契約書」は、この第二レベルの業務内で作成されている
1.3 作業を実施する

押印済み保守契約書
資材納品書
資材請求書
作業項目
作業手順

顧客検収書 「資材発注書」「ジョブオーダー」は、この第二レベルの業務内で作成されている
1.4 請求を行う

押印済み保守契約書
顧客検収書

請求書  
1.5 入金を確認する 入金明細    

 

 上の表で色を付けたインプットは、今回の可視化対象範囲内の、より上流の業務のアウトプットとなっていますが、色がついていないインプットは、対象範囲の”外”から「もたらされる」情報や文書となります。

 

この色のついていないインプットのうち、資材納品書、資材請求書、入出金明細などは明らかに社外から来る文書ですので業務改善の対象外として問題ないのですが、保守契約書、作業項目、作業手順といったインプットに関しては社内の、今回対象とした範囲外の何らかの業務によって作成されているはずです。

 

もしかすると業務改善の必要性は、保守契約書や作業項目や作業手順を作成するプロセスにもあるかもしれません。その場合は、可視化の対象範囲に「保守契約書を新規に作成する」「作業項目・作業手順を作成する」といった業務を追加し、AsIsの業務プロセスを可視化したほうがよいでしょう。

 

上記の作業を繰り返し、可視化する対象範囲にヌケ・モレがないことを確認します。

 

具体的な方策(課題の検討)

 

 

 

 

 

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